「で?」 「で??」 「貴方の依頼人が自分の恋人の素行調査を依頼したんでしょ? それがどうしたの?」 「あ、ああ。そんな話してたっけ?」 「してたわよ。貴方ってばいっつもそうなんだもの」 「ごめん」 「で?」 「ああ、うん。それで、その恋人だっていう人を尾行してたんだ」 「ええ。……ねぇ、髪の毛くしゃくしゃにするのやめてくれる?」 「だって、触り心地いいんだもん」 「やめなさい。変態」 「へ……」 「それで?」 「え、ああ。あのさ、茗ちゃんも話を横道に逸らすのやめてよ」 「貴方がしゃべることだけに専念すればいいのよ」 「むぅ。……さっきまでは」 「で!?」 「……。そしたら、その人恋人に会ってたんだ。依頼人ではなく、ね」 「本当に恋人なの?」 「調べたんだから、当たり前」 「じゃぁ、二股かけられてたってわけ?」 「それがさぁ、そういうわけでもないみたいで、」 「?」 「依頼人、恋人だって言ってたのが嘘みたいなんだ」 「……何、それ」 「だから、依頼人の勘違いっていうかなんていうか」 「……あー」 「どうしたらいいかなぁ、俺」 「……そう言う話、今ここでする?」 「聞いてきたのは茗ちゃんでしょ?」 「貴方が話してる途中でやめるから」 「しょうがないじゃん、だって茗ちゃんが」 「誘ったんじゃんとか誘惑したんじゃんとか言ったら殴るわよ?」 「……で、どうしたらいいかなぁ、俺」 「依頼人にあって真偽を問いただしてみたら? 若しくは、依頼人について調べてみる。意図的に嘘をついているならば対処はかわってくるだろうし。ただ、……、本人に嘘をついている自覚がないようならば、捜査対象者に言った方がいいわね 守秘義務は守れなくなっちゃうけど犯罪の片棒を担ぐわけにはいかないし。」 「……やっぱり?」 「ストーカー対策なら力になるわよ?」 「ふぅ、じゃぁそうする。茗ちゃんは頼りになるなぁ」 「っ。やめてよ。くすぐったい」 「恋愛って難しいねぇ」 「……それは今ここで、こうしながら、貴方がいう台詞?」 「どういう意味さ」 「この女たらしがってこと。それは私の台詞じゃない?」 「やだなぁ、本気だよ?」 「どーだか」 「……何? それとも茗ちゃんは本気じゃないと?」 「あのねぇ……、それは今ここで、こうして言う台詞じゃないでしょう」 「かもね」
事情と情事
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