嘘と嘘で繋ごう、私と貴方の赤い糸。

「好きだよ」
 彼は言った。
「うん」
 私は頷いた。
「でも、嫌いだ」
「知ってるよ」
「本当は、愛してる」
「私もね」
 そういってどちらかともなく、微笑んだ。
「それじゃあ」
「うん」
「いってきます」
 彼はドアに手をかけた。
「いってらっしゃい」
 私は手を振った。
「……とめないの?」
「とめて欲しいの?」
 彼の言葉にくすりと笑って言葉を返す。
「……いいや」
 彼は表情を変えないで首を横に振った。
「……いってらっしゃい」
「……行ってきます」
 そして、彼は外へでて、
 そして、ドアは閉まる。
「とめて、欲しかったよ」
「行かないで」
 私はドアに額を押し付けて呟いた。

 そして、ドアは開かない。
 二度と開かない。
 貴方はもうこの部屋には帰ってこない。

 嘘と嘘で繋ごう、私と貴方の赤い糸。