はい、こんにちは、今日はどうしました?
「先生、私、病気なのかもしれません。不治の病です、恋の病」
 ……それはそれは。ならば、貴方、来る場所を間違えていませんか? ここは、内科で、私はカウンセラーではありませんよ
「ええ、知っています。ですが、だからこそ来たんです。先生」
 ……ちょっと、手を握らないでいただけますか? 痛いんですけど、痛いってば
「先生」
 ……なんですか、そのちょっといっちゃった目は。
「先生、私は、先生が好きなんです」
 ……はい?
「私の病の感染源は先生なんです。今日はそれを言いたくて来ました」
 ……はぁ? ところで、手が熱いですね。
「ええ、恋の病の影響です。私の体内の情熱の炎が」
 それはいいから、ちょっと口をあけてください。
「そんな、口をあけろだなんて」
 ……診察です。ほら、ああ、やっぱりはれてますね。
 ちょっと失礼
「ああ、先生の手が私の額に」
 ……ちょっと殺意が。
 ……やっぱり、熱があるみたいですね。ちょっと、はかってみてください。
「熱があるのは私の情熱の」
 それはいいですから、とりあえず……終わりました?
 38.4! 風邪ですね。恋の病とかではなく。
「ええ、でも先生。こんなに体が熱いのは私の情熱の」
 風邪薬出しておきますから、はいもういいですよ。
「え、でも」
 ……ちょっと君、この患者さんを外に
「え、先生、先生返事をまだきいてな」



 ……まったく、あの人には困ったものだよ。毎日のようにくるけれども、それが恋じゃないってことに気付かない。あの人のあれは、恋愛なんかじゃなく、医者の診察にかかるという行為から生じる一種のつり橋効果なのになぁ。
 なんで気づかないかなぁ。若い娘の妄想は怖いなぁ。



「先生、もてもてですね」
 ……何だ、その顔は。
「いえ、別に」
 大丈夫、私が愛しているのは君だけだよ。