「ああ、お願い。じゃないと、あたし、首になっちゃう」
 彼女が手を合わせて、可愛らしく頼んできた。
 ああ、僕が断れるわけが無い。
 既に、カードの限度額ぎりぎりまでつかっちゃったけど、僕にはまだ頼れる友人が居るし、
「頼む、金を貸してくれ」
 頼れる友人が……
「嫌だよ」
「なんで俺がお前なんかに」
「誰が友達だこのやろう」
 ……、お金を貸してくれるところなら、どこにでもあるさ。

 浄水器と空気清浄機。
 そして、今回我が家に新しく、
 高機能換気扇(実体は不明)とやらがやってまいりました。
 これらよろしく。
 そしてさようなら、僕のお金。
 ああ、こんにちは、借金。

「ごめんね」
「ああ、いいんだ。それで、君が首にならなくて済むなら」
「うん、ありがとう」

 *

 ああ、あれは夢か幻か。
 僕の手元に残ったのは、督促状と、浄水器と空気清浄機と高機能換気扇とやらと、それから健康食品の類。
 彼女が居た痕跡は、何も残っていない。

 騙されていたと人は言う。
 嗤う。
「其れは君デェト商法という奴だよ」と嗤う。
 ああ、でも、僕は笑って言う。
 違うんだよ
 これで、いいんだよ
 僕は知っている。

 あれが僕の愛し方で、あれが君の愛され方だったんだ。
 だから、アレでよかったんだよ。

 ……目の前の督促状はちょっとうざいけど、それだって君といた証なんだから。