世の中では、毎日のように人が殺されている。それは過失かもしれないし、故意かもしれない。 明日は君が殺されるかもしれないし、君が殺すかもしれない。 殺人は概ね、衝動的に行われる。 つまり、ミステリの世界のように壮大なトリックを用いたりしないし、アリバイ作りのために時刻表をじっと見つめている犯人もいない。 だからこそ、気をつけたほうがいい。 例えば、君が誰かを殺したくなって、時刻表をじっと見つめることがあったら。 例えば、周りで連続殺人が起きたら。 例えば、吹雪によって山荘に閉じ込められたら。 そのような、ミステリ的なことがあった場合、君は気をつけた方がいい。 それはヤツが近くにいる証拠。 一度、彼らの世界に巻き込まれたら無事ではいられない。異様な事態に心を病むか、大切な人を失うか、誰かを殺すか、殺されるか。 いずれにしても、無傷では済まない。 ヤツの名前は、名探偵。 事件を憎み、事件を呼び寄せ、事件を食べて生きながらえている。 そんな生き物である。 プロローグ
|